第11回:オブザーバ

Observer Design

1. オブザーバの必要性

状態フィードバック制御 $\mathbf{u} = -K\mathbf{x}$ には全状態の情報が必要。

しかし、通常は出力 $\mathbf{y} = C\mathbf{x}$ のみ測定可能。

オブザーバ:出力の観測から状態を推定する動的システム

2. 同一次元オブザーバ(Luenberger オブザーバ)

2.1 構造

$$\dot{\hat{\mathbf{x}}} = A\hat{\mathbf{x}} + B\mathbf{u} + L(\mathbf{y} - C\hat{\mathbf{x}})$$

ここで $\hat{\mathbf{x}}$ は状態の推定値、$L$ はオブザーバゲイン。

2.2 推定誤差のダイナミクス

推定誤差 $\mathbf{e} = \mathbf{x} - \hat{\mathbf{x}}$ について:

$$\dot{\mathbf{e}} = (A - LC)\mathbf{e}$$

2.3 収束条件

$A - LC$ の固有値がすべて左半平面にあれば $\mathbf{e}(t) \to \mathbf{0}$

3. オブザーバの極配置

3.1 設計定理

定理: $(A, C)$ が可観測 ⟺ $L$ により $A - LC$ の極を任意配置可能

3.2 双対性による設計

$(A, C)$ の可観測性 ⟺ $(A^T, C^T)$ の可制御性

よって、極配置の双対問題として $L$ を設計可能。

3.3 アッカーマンの公式(SISO系)

$$L = \phi(A)\mathcal{O}^{-1}\begin{bmatrix} 0 \\ \vdots \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix}$$

4. オブザーバの極の選び方

4.1 分離定理との関係

制御器とオブザーバの極は独立に設計可能。

4.2 実用的指針

  • オブザーバの極は制御器の極より 3〜5倍 高速に
  • ただし、高速すぎるとノイズの増幅が問題に

5. 出力フィードバック制御

5.1 構成

```

オブザーバ: ẋ̂ = Aẋ̂ + Bu + L(y - Cẋ̂)

制御則: u = -Kẋ̂

```

5.2 閉ループ系

$$\begin{bmatrix} \dot{\mathbf{x}} \\ \dot{\mathbf{e}} \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} A-BK & BK \\ 0 & A-LC \end{bmatrix}\begin{bmatrix} \mathbf{x} \\ \mathbf{e} \end{bmatrix}$$

5.3 分離定理

閉ループ極 = 制御器の極 ∪ オブザーバの極

6. 低次元オブザーバ

6.1 動機

出力で直接観測できる状態は推定不要。

6.2 次元

$n$ 次系で $p$ 個の出力がある場合、$(n-p)$ 次元オブザーバで十分。

7. オブザーバの実装上の注意

  • 初期値 $\hat{\mathbf{x}}(0)$ の選び方
  • サンプリング時間の選定
  • 数値誤差の蓄積

8. まとめ

  • オブザーバは出力から状態を推定
  • $L$ の設計により推定誤差の収束速度を調整
  • 可観測性がオブザーバ設計の前提条件
  • 分離定理により制御器と独立に設計可能